テント倉庫を採用して事業をスピーディーに展開するには、早く価格を把握したいものです。しかし、簡単な概算価格を信用しすぎると、後で追加費用が発生するかもしれません。適切な予算計画には、精度の高い見積もりが必要です。そのためには、テント業者に十分な情報と時間を与えることが大切です。十分な情報を提供すれば、迅速な見積もりも可能です。

今回は、テント倉庫の価格を左右する要素と、精度の高い見積もりを早く受け取るためのポイントを紹介します。
スピーディーに事業を展開したい方は、ぜひ参考にしてください。

テント倉庫の概算の思わぬ落とし穴


テント倉庫は、一般的な建築物と比べて手軽に建設できるというメリットゆえに、種類や規模がわかれば見積もりも簡単だと思われていることが少なくありません。しかし、実はテント倉庫の価格には多くの要素が影響しています。以下に具体例を挙げてみましょう。

  1. 種類と規模
  2. 用途と保管物
  3. 膜材の種類
  4. 法的に満たすべき条件
  5. 外部環境
  6. 地盤条件
  7. 施工条件

これだけ多くの要素を整理しないと精度の高い見積もりを作成することはできません。そのため、精度の高い見積もりを受け取るためには、テント業者との情報のやりとりが大切です。テント業者は、必要な情報さえ揃っていれば、最短での見積もり作成に協力してくれることでしょう。
一方で、種類と規模のみで即時算出される概算価格は、これらの要素を考慮していません。そのため、信用して計画を進めていると、思わぬ追加費用が発生し、事業の成立が難しくなるような落とし穴にはまるかもしれません。

テント倉庫の価格はどう決まる?

前節でテント倉庫の価格に影響する要素を紹介しました。ここでは、これらの要素について詳しく解説します。

1. 種類と規模

テント倉庫を運用するに当たり、事業主にとって最も重要なのは種類と規模でしょう。テント倉庫の種類と規模は、価格の観点でも重要な要素です。なぜかというと、種類と規模によっては、緩和処置に当たる国土交通省告示(以下、告示)667号を適用できるからです。
以下に告示667号の適用範囲の一部を抜粋します。他にも、屋根の形式や、一般部の膜面や可動式膜面の構造など、さまざまな要件があるため、以下の条件に当てはまる場合はテント業者に相談してみましょう。

・階数が1であること
・延べ面積が1,000㎡以下であること
・軒の高さが5m以下であること

2. 用途と保管物の特性

次にイメージしやすい要素が、テント倉庫の用途と保管物の特性です。例えば、保管物がデリケートで、倉庫内温度に指定がある場合は、空調設備を設置します。室ごとに温度を調整したい場合は、間仕切りの仕様にも配慮する必要があるでしょう。また、事業によっては、防犯カメラやオートロックなどの防犯設備を設置し、強固なセキュリティを構築する必要があるかもしれません。
保管物の可燃・不燃性もテント倉庫の価格を大きく左右する要素です。一般的に、保管物が可燃性の場合、多くの部分で不燃材料としての膜材を要求されます。そのため、可燃性の保管物を収容するテント倉庫は、価格が高くなる傾向があります。

3. 膜材の種類

前項で可燃性保管物を収容する際に必要な不燃材料としての膜材について触れましたが、テント倉庫には、防炎材料もしくは不燃材料としての膜材が使用されます。不燃材料は防炎材料よりも高性能であり、価格が高いのが一般的です。不燃材料としての膜材を使用する必要がある部位は、建築基準法の告示で定められています。詳しくは以下の記事で解説しているので、興味のある方はぜひご覧になってみてください。

参考:テント倉庫の膜材料について解説!

4. 法的に満たすべき条件

告示667号の適用や、防炎・不燃材料としての膜材の採用要否など、法的な条件を上述しました。他にもさまざまな法的条件があります。法的に満たすべき条件は、建設する地域の特定行政庁の指針や、テント倉庫の詳細によって異なります。
事業主の皆さんは、テント倉庫の法的な条件の確認にどのような情報が必要か分からないところも多いと思います。その際は、テント業者に何が必要かを問い合わせてみるのもよいでしょう。

5. 外部環境

建設地の外部環境は、テント倉庫のイニシャル・ランニングコストに大きな影響を与えます。具体的な外部環境としては、以下のようなものが挙げられます。

・積雪
・強風(台風)
・地震
・潮風(塩害)

地域によって法律上考慮する必要がある積雪荷重や風圧力、地震力が定められています。テント業者に建設地を伝えると、これらの外力を設定することができ、鉄骨部材のサイズや追加部材の必要性の有無などの判断に役立ちます。
また、沿岸部のような潮風を強く受ける地域では、塩害による鉄骨部材の劣化が懸念されます。塩害対策としては鉄骨の亜鉛メッキ塗装が一般的です。早い段階で見積もりに反映しておくと後々の追加費用の発生を防げます。塗装は定期的なメンテナンスが大切なので、ランニングコストについてもテント業者に相談するとよいでしょう。

6. 地盤条件

地盤条件は、基礎構造の計画に大きな影響を与える重要な要素ですが、基本的には地盤調査を行わないと詳細を知ることはできません。地盤調査には通常1~2ヶ月の時間がかかり、相談された時点ですぐに判断するのは難しいのが実状です。テント倉庫の種類や規模から算出する即時概算でハマりやすい落とし穴といえるでしょう。

通常、地盤調査で表層および支持地盤の支持力などを調べ、基礎構造を設計します。地盤がよければ表層地盤に直接基礎を載せるだけで支えられます。一方、軟弱地盤の場合は、表層地盤を地盤改良したり、支持地盤まで杭を下ろしたりする必要があります。通常の建物に比べると地盤改良や杭が必要になるケースは少ないですが、必要な場合は価格が高くなるのが一般的です。

7. 施工条件

作業スペースが制限される狭小地や高架下、近隣に対する配慮が必要な閑静な住宅街などでは、思うように作業ができません。建設地までの道路が狭いと、大型重機を搬入できず、効率的な施工ができないことも。また、掘削中に予期しない埋設物が発見されると、埋設物の所有者への確認などに時間がかかり、工事が止まってしまうこともあります。

このように、さまざまな施工条件で施工効率が落ち、建設コストに影響を与えます。予期しない埋設物などを事前に把握することは難しいですが、作業スペースや搬入経路などは建設地の情報をもとに事前に調査することが可能です。

早く精度の高い見積もりを受け取るにはどんな情報が必要?

では、精度の高い見積もりを早く受け取るためのポイントは何でしょうか。基本的には、前節で解説したテント倉庫の価格に影響する要素に関する情報をテント業者に与えることが大切です。具体的な情報を以下に挙げるので、見積もりを依頼する際は積極的に情報を提供するとよいでしょう。

見積もりに役立つ情報価格に影響する要素
1. 建設地膜材の種類、鉄骨重量、基礎構造、排水計画 、施工条件、法的条件など
2. 種類と規模法的条件、鉄骨部材や膜材の数量など
3. 用途空調・防犯・防火・消防設備など
4. 保管物の特性空調設備、膜材の種類など
5. 特殊な要望特殊な設計要望への対応項目
6. 既存建物の確認申請図書基礎構造、施工条件など

建設地に既存建物が存在する場合は、既存建物の確認申請図を提出することができると精度の高い見積もりの作成に役立ちます。確認申請図書には、図面や構造計算書が含まれており、基礎構造の設計の参考にしたり、埋設物を推測したりすることができます。また、地盤調査報告書が添付されていれば、地盤調査を省略して速やかに基礎構造の設計を行うことができるかもしれません。

テント倉庫はランニングコストも考えよう

建物の建設・運用を計画するときは、イニシャルコストだけでなく、ランニングコストも把握しておくことが大切です。テント倉庫の場合は、膜材の張り替えや鉄骨塗装の補修などの定期メンテナンスが必要であり、これらの頻度や費用を把握することで適切な事業計画を立てることができます。
テント倉庫を検討するときは、テント業者に相談しながらランニングコストも予算に組み込むようにしましょう。膜材を傷み具合に応じて張り替えれば、テント倉庫は鉄骨フレームの耐用年数同等まで継続使用可能です。

参考:テント倉庫の耐用年数について解説。地震や台風に対する耐久性は?

おわりに

事業を計画するに当たり、価格は重要な要素ですよね。テント倉庫は手軽さゆえに簡単に見積もりを作成できると思われがちですが、実際には多くの要素が絡んでいます。見積もりを依頼するときは、建設地、種類、規模、用途、保管物の特性、特殊な要望などの情報を速やかに提供できると、精度の高い見積もりを早く受け取ることができるでしょう。