テント倉庫の耐用年数について解説。地震や台風に対する耐久性は?

約5ヶ月で建設できるスピード感が魅力のテント倉庫は、環境変化が激しい物流生産施設などで注目を集めています。
一方で、耐用年数や、地震・台風に対する耐久性が気になるという方も多いのではないでしょうか。

この記事では、テント倉庫の一般的な耐用年数や、長持ちさせるポイントについて解説します。
地震や台風に対する耐久性についても説明しますので、テント倉庫の採用を検討している方は、ぜひご覧になってみてください。

地震や台風に対する耐久性

建築物として確認申請を受けるため、建築基準法で規定されている荷重条件内の地震や台風であれば安全性に問題はありません。建築基準法や関連告示には、地震や台風に対する安全性の基準が定められており、テント倉庫も通常の建築物と同様の安全性が確保されています。

テント倉庫の耐用年数

はじめに、テント倉庫の一般的な耐用年数について解説します。テント倉庫は、膜材と鉄骨フレームで構成されています。
膜材と鉄骨フレームで耐用年数が異なることに留意しておきましょう。

テントの膜材の耐用年数は7~10年

通常の使用環境においては、テントの膜材の耐用年数は、7~10年とされています。15年ほど張り替えずに使用している実例も多くありますが、基本的には10年程度で張り替える計画を立てておくのがおすすめです。なお、10年程度の耐用年数を実現するためには、定期的なメンテナンスの実施が必要不可欠です。後述するように、専門家の力も借りながら適切な運用を心掛けてみてください。

テント倉庫の膜材は、ALCなどの外装材と比べると耐用年数が短いですが、膜材の張り替えは数日で完了します。張り替えなどのメンテナンスや移設・増設が手軽にでき、事業計画に柔軟に対応できるフレキシビリティがテント倉庫の魅力です

鉄骨フレームの耐用年数は30~40年

国税庁の基準では、金属造の工場・倉庫の耐用年数は、以下のように設定されています。

引用)国税庁「主な減価償却資産の耐用年数表」を参考に筆者が作成
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/pdf/2100_01.pdf

テント倉庫で使われる鉄骨フレームは肉厚が3mm以下のケースもあり、その場合の国税庁基準の耐用年数は17年です。しかし、実際のテント倉庫における鉄骨フレームの耐用年数は一般的に30~40年とされており、システム建築やプレハブの倉庫の耐久性と比べても遜色ありません。

テント倉庫の耐用年数が短くなる要因

テント倉庫は、外部環境により劣化が進みます。テント倉庫を採用する場合は、手軽さというメリットを活かし、事業動線を優先して設置するケースがほとんどですが、できる限り耐用年数が短くなるような外部環境は避けた方がよいでしょう。

紫外線

日当たりがよい環境下では、強い紫外線などによりテント膜の硬化が進み、経年劣化を早めてしまいます。特に、日差しの強い南面は影響を強く受ける傾向があります。木や建物の北側に設置して強い日差しを避ける計画などにより、紫外線による劣化を遅らせることが可能です。

潮風(塩害)

鉄骨フレームが潮風の塩分に晒されると、錆が進行して劣化していきます。潮風による塩害は、テント倉庫に限らず、鉄骨造や鉄筋コンクリート造の建築物でも留意しなければならない問題です。膜材は手軽に張り替えることができますが、鉄骨フレームは簡単に取り換えることはできません。
海岸から500m以内は「重塩害地域」、2km以内は「塩害地域」と呼ばれますが、強風で塩分が飛散し、海岸から5~10km離れた地域で塩害が報告されるケースもあります。海が近い場合は、近隣の塩害状況を調査しておくとよいでしょう。
塩害が懸念される場合は、鉄骨フレームに溶融亜鉛メッキによる防錆処理を施すのが一般的です。溶融亜鉛メッキを施すと、雨の侵入による錆にも強くなるというメリットがあります。

膜材の張力が不十分な場合、膜が風によって上下に動くことで繰り返し衝撃荷重を受け、強度劣化を起こすことがあります。新築時に比べて強風時の膜の動きが激しくなってきたり、膜材と鉄骨フレームの緊結が緩んできたりしたときは、テント業者にメンテナンスを依頼しましょう。

地震・台風

建築基準法で規定されている荷重条件内の地震や台風であれば、基本的に膜材も鉄骨フレームも問題ありません。しかし、強風時に木の枝や看板といった鋭利な飛来物がぶつかった場合、膜材が破損するケースがあります。

飛来物を防ぐのは難しいため、暴風雨にさらされた後には、膜材に穴や破れがないか確認してみてください。膜材が破れていると、雨水が侵入し、鉄骨フレームの錆びに繋がります。早期の対応で被害の甚大化を防ぎましょう。

テント倉庫の耐用年数を最大化するには

テント倉庫の耐用年数を最大化するには、適切な計画とメンテナンスが大切です。特に、運用を開始してからの定期的なメンテナンスが、テント倉庫の長寿命化に繋がります。

適切な計画

前節で述べたとおり、強い紫外線や潮風の影響でテント倉庫の耐用年数は短くなってしまいます。空いている土地の利用や他の施設との位置関係など、事業におけるスムーズな運用を優先しながらも、可能であれば強い紫外線などを避けられる場所に設置するのがおすすめです。

経年劣化が進行しやすい環境に設置する場合は、鉄骨フレームの防錆処理や膜材のコーティングの厚みなどを考慮した予算を見込むようにしましょう。

自主点検

適切なメンテナンスの第一歩は、定期的な自主点検です。下記のチェックポイントを参考にしながら点検してみてください。

【膜材】
・膜面の穴、破れ、ゆるみ、皺の増加
・膜材表面の劣化(硬化や割れなど)
・鉄骨フレームとの緊結のゆるみ
・鉄骨フレームに緊結しているロープなどの破損

【鉄骨フレーム】
・鉄骨フレームの変形、破損
・鉄骨フレームの錆び
・ボルトのゆるみ

【その他】
・出入口の扉のガタつき
・換気扇や照明といった器具の不具合

専門家によるメンテナンス

テント倉庫の耐用年数を伸ばすには、専門家の知識が欠かせません。膜材の劣化診断などを定期的に依頼し、張り替え時期などをアドバイスしてもらいましょう。また、鉄骨フレームの防錆塗装の塗り替えを定期的に実施してもらうことで、鉄骨フレームの致命的な劣化を防ぐことができます。

大事な保存物の損傷や事業の損失を防ぐためには、テント倉庫の突然の破損にも素早く対応する必要があります。暴風雨の後に雨水の侵入などを確認したときは、自主点検だけでなく、専門家にも臨時点検を依頼してみてください。

【参考】テント倉庫の張り替えにかかる期間

通常、テント倉庫の張り替えは数日で完了します。この間はテント倉庫を使用できなくなるので、仮倉庫などを準備しておく必要があります。
張り替えまでの一般的な流れは以下のとおりです。

  • 調査 :約1日
  • 製作 :約7~10日
  • 張り替え作業 :約1~3日

※電気工事や建具などは状況により応相談
※増築などの場合、建築確認申請の期間が別途必要

おわりに

テント倉庫と聞くと、運動会のテントのような簡易的な建屋をイメージする方が多いかもしれません。実際には、膜材は10年程度、鉄骨フレームは30年程度の耐用年数を期待でき、建築基準法で安全性が担保されているしっかりとした建築物です。膜材の適切な定期メンテナンスと張り替え作業を実施すれば、建屋としては30年程度まで運用可能と考えられます。他工法よりも比較的手軽に移設や増築・減築ができるテント倉庫の魅力に興味のある方は、採用を検討してみてはいかがでしょうか。

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