本来、天井は屋根裏と部屋を仕切り、配管などを隠してデザイン性を向上させたり、埃の落下を防いだりする役割を担っていました。現代では省エネ基準の改正や大地震時の天井被害などを背景に、審美・断熱・快適・環境・安全性といった観点でも重要性が増しており、さまざまな素材・システムの天井材が登場しています。

今回は、繊維素材特有の軽やかな美しさが魅力の天井・内装材「三軸織物」をご紹介したいと思います。三軸織物は、サカセ・アドテック株式会社が世界で唯一工業化している製品であり、天井のほか壁・装飾・間仕切りなどとしても使用できます。新しい天井・内装材を探している方はぜひご覧になってみてください。

三軸織物とは

三軸織物は、60度の2方向の経糸に緯糸を織り込むことで安定構造である正六角形を構成し、方向に依存しない強度を発揮する伝統技術です(図1)。縦・横の2方向の糸で構成する一般的な二軸構造は、縦・横方向の力には強くても、斜め方向に強度を発揮できないケースがあります(図2)。三軸織物は構造上の弱点が少ないため、あらゆる方向に強度を発揮できる素材です。また、形状復元力が優れており、しなり・戻り・つぶれ・振れといった負荷に対して強い抵抗を有しています。
サカセ・アドテック社は三軸織物を世界で唯一工業製品として扱っており、宇宙分野における人工衛星や探査機搭載用のアンテナなどで実績を持っています。

建築分野では天井・内装材として使用

建築分野においては、天井・壁・装飾などの内装材や、間仕切りとして三軸織物が使用されています。建材として使われる三軸織物は、ポリエステルやグラスファイバーを素材としており、以下のような特徴を持っています。

  1. 優れた強度
  2. 軽量
  3. 曲面にも対応できる成形性
  4. 撥水性
  5. 透過性
  6. 不燃性 (グラスファイバー) / 難燃性 (ポリエステル)

なかでも、「軽量」「成形性」「透過性」などの特性は、ボードや木質・アルミパネルといった従来の内装材にはあまり見受けられません。次節からは、これらの特徴によるメリットや建築事例をご紹介したいと思います。

三軸織物のメリット

形と光の審美性

建材としての三軸織物は、伝統工芸品のような軽やかな美しさを再現しています。優れた加熱成形性と曲面追従性により深絞り成形や凹凸表現などを得意としており、レースのような柔らかい表現も可能です。

また、繊維の目が光を通すことにより、透過性を有しています。柔らかい質感と光が融合し、形と光の審美性が発揮されます。ボードのような固い素材と比べて繊細な表現ができるため、インテリアデザインの方向性によっては代えの利かないユニークな素材といえるでしょう。

軽量素材による安全性

三軸織物は、200~800g/㎡という圧倒的な軽さを実現し、安全性能の向上に寄与しています。
2011年の東北地方太平洋沖地震による天井脱落被害を受け、2014年には建築基準法改正で建築物の天井脱落対策が示されました。そのなかで、特に天井脱落対策が必要なものとして定められたのが「特定天井」であり、以下の条件に合う天井を指します。

  • 高さが6mを超える
  • 水平投影面積が200㎡を超える
  • 天井面構成材の単位面積質量が2kgを超える
  • 居室・廊下などの人が日常立ち入る場所に設けられるもの

特定天井には細かい設計基準が定められており、材料・施工費が高くなる傾向があります。そのため、コスト面で大空間の特定天井対策が課題になるケースが少なくありません。その対策の一つとして挙げられるのが、「天井面構成材の単位面積質量が2kgを超える」という条件に着目した超軽量天井材です。一般的な超軽量天井材は700g/㎡程度なので、三軸織物は特定天井対策として十分な軽さを有しており、安全性とデザイン性を両立させることができます。

省エネと快適性

環境省によれば、空調設定温度を1℃緩和することで冷房時では約10~13%、暖房時では約10%の消費電力削減が可能です。また、光環境の面では、眩しさによる不快感を軽減する効果を期待できます。均一な照度で明るさを確保できるため、執務空間にもぴったりです。日本経済新聞社とニューオフィス推進協会が主催する「日経ニューオフィス賞」では、「居心地の良い空間」や「五感」が審査の視点として挙げられています。三軸織物は、エレガントな空間を演出して居心地の良さを感じさせるほか、動きのあるデザインで五感を刺激します。社員の創造性を向上させ、パフォーマンスの最大化を目指すオフィスにもおすすめです。

防炎・難燃・不燃認定

サカセ・アドテックの三軸織物製品は、材料によって防炎/不燃認定を取得しています。特にグラスファイバーを素材とした製品は、加熱されて赤熱した後も形や固さが変わらないというユニークな特徴を持っています。これにより加熱成形による自由形状と不燃性能を両立し、建築基準法の内装制限が適用される部屋でもオリジナリティのあるデザインを実現可能です。

三軸織物のデメリット

次に、三軸織物のデメリットについて解説します。

価格の高さ

三軸織物の内装材は、通常の内装材と比べると高い傾向があります。コストを意識する場合は、安価な天井やスケルトン天井の装飾材として使う方法などが挙げられるでしょう。また、特定天井の条件に当てはまる部屋の場合は、特定天井対策と比べるとリーズナブルなケースもあります。

取り扱っているメーカーが限定的

三軸織物はサカセ・アドテックの独占技術であり、ボードなどの一般的な内装材と比べると取り扱っているメーカーが限定的です。ストラクトは、三軸織物を取り扱っている数少ないメーカーなので、商品の概要やラインナップ、使い方など、お気軽にお問い合わせください。

建築分野における三軸織物の施工事例

天井装飾

関西空港免税店(大阪府:2023年)

ヤマハミュージック 横浜みなとみらい(神奈川県:2024年)

「関西空港免税店」では、三軸織物を天井装飾として使用しています。空港の免税店やショールームが持つ特別感を上質なレースのような装飾で上品に演出しているのが特徴です。関西空港免税店ではグラスファイバーを使った不燃材料を採用しています。

照明カバー

ふくい南青山291(東京都:2023年)

三軸織物を照明カバーとして使用している事例です。ファブリックな質感で上品さを演出するとともに、スケルトン天井を目隠しする役割を担っています。コストバランスを考慮しながらオリジナリティが光るデザインを実現しています。

おわりに

より高性能な天井・内装材が求められるなか、三軸織物はさまざまな観点で新たな価値を提供しています。特に審美性・安全性・省エネ・快適性といった優位性は現代建築において非常に重要視されており、多くのオーナーや設計者の理想を実現する助けになると考えています。三軸織物をご検討の際には、素材に関してはサカセ・アドテック株式会社、施工に関しては弊社ストラクトまでお問い合わせください。

「三軸織物の施工」に関するご質問があれば、まずはお気軽にご相談ください。

「素材」に関する技術的なご相談は、サカセ・アドテック株式会社

受付時間 9:00-18:00 [平日のみ]