失敗しない倉庫建築方式の選び方

新しい倉庫を建てる場合には、自社が扱う製品や業務内容に合わせて適切な倉庫の建築方式を選択する必要があります。しかし、倉庫の建築方式を知らなかったために、オーバースペックな倉庫を建ててしまい、お金も時間も無駄にしてしまったというケースも多いでしょう。

本記事では、倉庫選びで後悔しないためにも、代表的な倉庫の建築方式の概要、自社の要件にあった適切な方法について解説していきます。

倉庫の建築方式は4種類

ここでは、各建築方式の詳細についてみていきましょう。
倉庫を作る際の選択肢は、システム建築・テント倉庫・在来工法・プレハブ工法の4種類が代表的です。

システム建築

システム建築とは、建築物を構成するための主要な部材を規格化し、設計から生産までの製造プロセスをシステム化した建築方式です。システム化されているため、迅速かつ安定的な品質の建築が可能です。

ただし、規格化された部材を使用するため、外観の自由度は低くなりやすく、規格外のサイズには対応しにくいといえます。

メリット

  • 高耐震・高耐久
  • 品質が安定している
  • 生産段階の設計がしやすく増設がしやすい

デメリット

  • カスタマイズが難しい
  • 外観の自由度が低い

テント倉庫

テント倉庫とは、軽量鉄骨(厚みが6mm未満の鉄骨)に、シート状の膜を張る建築物です。軽量であることから、基礎を小さくすることができます。

外装材のテントが簡単に骨組みに定着できるため、他素材に比べ、施工スピードが速く、工程全体としてコストを低く抑えることが可能です。解体・増設する場合も迅速に施工できます。
また、以下の国土交通省の告示667号の条件を満たすことができれば、風荷重の低減と適合性判定(ピアチェック)が不要となる緩和措置が適用可能です。ピアチェックは都道府県が指定した機関が構造計算を行うことを意味します。

<告示667号の条件>

  • 膜構造の建築物
  • 階数が1階
  • 屋根、壁がある
  • 延べ面積1000㎡以下、地面から軒高5m以下となっている
  • 屋根形状が切妻、片流れ、円弧となっている

つまり、国土交通省の告示667号を満たしたものであれば、よりスピーディーな建築とコスト低減が可能となります。

メリット

  • 低コスト・短工期
  • 高耐震
  • 無柱大空間
  • 自由設計
  • 移設・解体が容易
  • 明るい空間作りが可能

デメリット

  • 防犯性が低い(高価な素材の保管や治安の悪い地域に注意)
  • 外気の影響を受けやすい(温度/湿度の管理に注意)

在来工法

在来工法とは、従来の日本の工法によって建築物を施工する建築方法です。木造・鉄骨造・鉄筋コンクリート造等で建設され、 コストと時間さえあれば、耐久性やデザイン性などニーズに合わせて、法規の範囲内で自由に設計できる点が在来工法の特徴といえます。

ただし、しっかりと正しく要望を伝えなければコストの把握が難しく、4つの工法の中では最も設計期間が長くなりやすい点はデメリットといえます。

メリット

  • 無柱大空間
  • デザイン性、耐久性が高い(コストによる)

デメリット

  • コストが高い
  • 工期が長い

プレハブ工法

プレハブ工法は、決められた寸法の部材を現場で組み合わせる建築方式です。全ての部材の強度、長さが決まっており、現場で組み立てる場合も手順が決まっているため、比較的短納期で納品できる点が特徴といえます。

また、条件次第では、設置のコストが安価で、外観も外装材が充実してきたことからデザイン性を高められる点もメリットです。

ただし、設計として大空間(高い天井+無柱)の構成が苦手です。。また、システム建築と同様に工場で作られるものの、業者内で決められた規格以上の品質や強度の部材生産は不可能となっている点にも注意しましょう。

メリット

  • 品質が一定
  • 工期は短め
  • コストを抑えられる
  • 移設・解体が容易

デメリット

  • 耐火性はない
  • デザイン性が低い(選択するものによる)
  • 間取りの自由度は高くない(大空間の構成が難しい)

<ケース別> 倉庫建築の選び方

ここでは、それぞれのケース別に、倉庫の建築方式のおすすめを紹介していきます。自社の状況に適した倉庫を選択するための指針にしてみましょう。

低価格と短工期を求めるなら [テント倉庫]

建築コストの安さ、納品・建築速度の早さを求める場合はテント倉庫をおすすめします。耐用年数も数年から10年程度であれば問題ないため、設置費用で悩む場合や急ぎで倉庫が必要な場合に役立つといえるでしょう。また、地盤が弱い場所でも軽量・高耐震であるため、設置しやすい点は魅力です。

ただし、防犯性が低いため、 小さくて高価なモノの保管や治安が悪い地域には適しません。加えて、温度や湿度の管理が苦手で、外気の影響を受けやすいため、 食品や電子部品の保管には向いてない点は知っておきましょう。

低価格で防犯性を求めるなら [プレハブ工法]

防犯性を高めたうえで、コストを安価に抑えたい場合はプレハブ工法をおすすめします。
事業規模に合わせて、移設や増設が想定される場合も利用しやすい建築方式です。さらに、エアコンなどの設備を設置できるため、温度や湿度管理がしやすい点もメリットといえます。

ただし、6m以上のスパンでは、プレハブ内の柱が必須となります。また、外観の自由度は低いため、店舗として使用する場合にはよく検討しましょう。

耐久性と大スパンの空間が必要であれば [システム建築]

倉庫として、高い耐久性と大スパンの空間が必要であればシステム建築をおすすめします。耐候性や耐震性を確保しつつ、大規模な空間が必要な場合には適した建築方式だといえるでしょう。

ただし、部分的階層構造では割高になりやすく、外観のデザインの自由度は低めです。数十年単位(30年程度)で使用したい場合や大スパンの空間が必要な場合は、システム建築を検討してみましょう。

自由な設計と耐久性を求める方は [在来工法]

2階建てや3階建て、部分的な階層構造やデザイン性を重視する場合は在来工法をおすすめします。予算にもよるものの、依頼主の希望に合わせたデザインが可能である点と、扱う商品の大きさや数量に合わせて柱や梁の位置を工夫しやすい点は魅力だといえます。

ただし、設計に時間がかかりやすく、コストもオーダーメイドとなるため、高騰しやすい点がデメリットです。そのため、予算に余裕がある場合や扱う商品の数量が多い場合などは在来工法を検討してみましょう。

倉庫の施工会社の選び方

倉庫の施工会社を選ぶ場合は、次のポイントを比較してみましょう。

  • 強みや専門知識がある業者を選ぶ
  • 建設プロセスにおける施工業者の担当範囲
  • ワンストップで請け負っているかどうか

まず、ワンストップで請け負える、テントやプレハブなど特定の工法に対して、強みを持っているかどうか確認しましょう。専門知識の有無によって、ニーズに合わせた提案に期待できることに加え、最新技術や情報も持っていると想定されるためです。

次に、建設プロセスにおける施工業者の担当範囲についても確認しておきましょう。たとえば、基礎から建設・設置はどの業者が行うのか、アフターフォローまであるのかは重要なポイントです。担当範囲がそれぞれのプロセスで違った場合は、それぞれの業者に個別に問い合わせを行う必要があります。とくにアフターフォローに関しては、長期間の使用を検討している場合は必須だといえるでしょう。

最後に、提案から施工、アフターフォローまでワンストップで受けているかどうかという点もチェックしましょう。ワンストップで依頼できる場合には、コストが安価になりやすく、提案からアフターフォローまで各セクションが連携しやすいため、建築物の品質も高い水準となります。 お客様からの窓口が一本化され、手間や時間を省くことができる点もメリットです。

まとめ

ここまで倉庫の建築方式の種類についてみてきました。予算が限られる場合はテント倉庫、デザイン性の高い倉庫が必要であれば在来工法など、ニーズに合わせた選択を行うことが大切だといえます。

STRUKTでは、テント倉庫の提案から設計・施工、アフターフォローまでワンストップで提供しています。
「予算に限りがある」「オーバースペックではなくニーズにあった倉庫がほしい」といった場合は、ご相談ください。

関連事例

ご質問・ご相談などがありましたら
お気軽にお問い合わせください