「一級建築士ならどんな建物も設計できる」と思っていませんか?実はそうではありません。倉庫建設には、豊富な実績と専門知識を持つ「倉庫のプロ」に依頼することが重要です。今回は、プロに任せる理由と、その見極め方について解説し、さらに倉庫でよく使われる特殊構造物についてもご紹介します。ぜひご一読ください。

倉庫建設は倉庫の経験豊富な設計・施工者に依頼しよう

使いやすい倉庫を実現するには、倉庫建設の実績が豊富な設計者や施工者に依頼することが大切です。倉庫建設にはさまざまなノウハウがあり、建築士であれば誰でも設計できるわけではないからです。ここでは、「倉庫のプロ」に依頼すべき理由をみていきましょう。

優れた倉庫を実現するには専門的な知見が必要

優れた倉庫を実現するには、事業収益を最大化するキャパシティ、生産性を向上させる作業性、保管物に適した温熱環境など、多くの専門的知見が求められます。オフィスなどでも同じようなキーワードが挙げられますが、建物種別によって意味合いが異なります。

また、ひとくちに「倉庫」といっても、用途はさまざまであり、場合によっては特殊な対応が必要です。例えば、「冷凍冷蔵倉庫」であれば、適した温度を保ち続けるための設備、災害時のバックアップ電源、結露対策、これらのイニシャル・ランニングコストの最適化といった要件が追加されるでしょう。

このような倉庫に特化した知見は、倉庫建設の実績がないとなかなか身に付きません。そのため、倉庫建設は、倉庫の実績が豊富な「倉庫のプロ」に依頼することが大切なのです。

すべての建設会社が倉庫を得意としているわけではない

建設会社は数多くありますが、すべての建設会社が倉庫を得意としているわけではありません。ハウスメーカーや工務店が住宅に特化していることがわかりやすい事例ですが、それぞれの建設会社に特色があり、蓄積しているノウハウが異なります。

倉庫建設を得意としている建設会社としては、ゼネコンやシステム建築業者、テント業者などが挙げられます。特に、丁寧なアフターサービスを提供している建設会社は、実際の倉庫の使われ方をよく知っています。不具合対応などを通してユーザーの声を聞き、実状に即したリアルな知見を蓄積しているからです。

倉庫建設を依頼する際は、倉庫建設の実績や、アフターサービスの対応状況などを参考にするとよいでしょう。

「倉庫のプロ」であることを確認するポイント

ここでは、前節で述べた倉庫建設で求められる専門的な知見、つまり、倉庫建設のポイントを紹介します。倉庫のプロは、これらのポイントをよく押さえています。建設会社との打ち合わせではこれらのポイントを意識し、安心して倉庫建設を任せられるプロであることを確認しましょう。

キャパシティ

倉庫の価値に直結するのが、「キャパシティ」です。特に倉庫をリースする場合、キャパシティの最大化が、収益の最大化に繋がります。このような事業計画は基本的に発注者が行うものですが、設計者が収益を考慮してキャパシティを提案してくれると安心できます。

キャパシティを大きくするためのポイントは、廊下や通路などの無駄なスペースを極力なくすことです。また、柱の周りは倉庫スペースとして活用しにくいので、柱の本数を減らす、トラックの大きさにあわせて柱を配置するといった工夫が求められます。

倉庫運用の効率化

キャパシティとあわせて考えたいのが、「倉庫運用の効率化」です。保管物を高密度に積み上げる計画とすればキャパシティは大きくなりますが、十分なスペースがないとパレットやフォークリフトを使えなくなり、作業効率が落ちてしまいます。キャパシティを最大化しつつも、作業しやすい倉庫にすることが大切です。

もうひとつのポイントは、入荷から出荷までのスムーズな流れをつくることです。入荷・入荷検品・保管・出荷検品・出荷の順序に逆らうことなくモノが流れていくことを基本とし、ヒト・モノ・機械の動線が交差していないことを確認しましょう。

労働環境

業界に関わらず、労働環境の改善は喫緊の課題とされています。なかでも、生産・物流分野は過酷な労働環境による人手不足が問題視されていたこともあり、特に改善が急がれています。快適かつ安全に働ける環境を整備することが、使いやすい倉庫への第一歩ともいえます。

倉庫内での熱中症対策、作業スペースの明るさの確保、荷役時間の短縮など、働きやすくなる倉庫を目指しましょう。倉庫のプロの豊富な実績を踏まえ、どのような対策が効果的かを相談するのもおすすめです。

テント倉庫などは専門業者に相談しよう

鉄骨造でつくられることが多い倉庫ですが、その他にも有力なソリューションが提供されています。例えば、スピーディーな建設や短期的な使用を求める場合、テント倉庫やシステム建築といった構造物が考えられます。これらの特殊な構造物を採用する場合、それぞれの専門業者に依頼するのがおすすめです。ここでは、特殊な構造物の概要と、専門業者に依頼するメリットをみていきましょう。

倉庫に使用される特殊な構造物とは

テント倉庫

テント倉庫は、外壁に膜材を使用することが特徴の構造物です。透光性に優れ、日中であれば照明がなくても明るく作業しやすい空間をつくれます。間口や奥行きを自由に指定できる「自由設計」でも比較的スピーディーに建設できることがメリットです。膜材のメンテナンスを定期的に行うことで、長く使用することができます。

システム建築倉庫

システム建築倉庫は、設計から施工までのすべてのプロセスがシステム化された倉庫です。一般的な鉄骨造に近く、頑丈かつ長寿命で、大規模倉庫や2階建てにも対応可能です。一方、テント倉庫と比べると、コストが高くなる傾向があります。

特殊構造物の専門業者に依頼するメリット

特殊構造物は、設計要件やメンテナンスに特徴があるため、それぞれの専門業者に建設を依頼するのがおすすめです。例えば、テント倉庫は膜の張り替えなどのメンテナンスが必要ですが、頻度やコスト、作業時に求められる対応などに詳しいのは、やはりテント業者です。

ゼネコンなどを介して特殊構造物を建設することもできますが、実際は専門業者に依頼しており、ゼネコンの担当者はテント工法に精通していないケースが一般的です。メンテナンスを実施する場合もゼネコンなどに仲介してもらう必要があり、手間が増えてしまいます。

また、精度の高い事業計画を立てるには、メンテナンスの頻度やコストを把握する必要があります。そのためにも、特殊構造物を採用する場合にはそれぞれの専門業者に依頼し、実際の運用方法を正しく把握しておくことをおすすめします。

倉庫に関する知見を蓄積している

本記事の前半では、倉庫建設は倉庫のプロに依頼することが大切であることを述べました。ここで気になるのが、テント工法・システム建築といった特殊構造物の専門家は、「倉庫のプロ」なのか、ということです。

結論から述べると、これらの専門業者は、倉庫の実績・専門知識を有している倉庫のプロであるケースが多くみられます。テント工法・システム建築は倉庫としてよく使われているため、必然的に専門業者の設計・施工者は、倉庫のノウハウを蓄積することになるからです。丁寧なメンテナンスを行っている業者も多く、実情に即した知見を有しています。営業担当者も詳しい知識を持っていることが多いため、まずは相談してみるとよいでしょう。

おわりに

医者の専門がわかれているように、建設業の設計・施工者も専門とする分野があります。
住宅は住宅の専門家に、倉庫は倉庫の専門家に依頼することが大切です。
自社の事業をよく理解してくれる建設会社を見つけ、使いやすい倉庫を目指しましょう。