テント倉庫は、基礎を構築して土地に定着することで、立派な「建築物」として扱われることをご存じでしょうか?運動会のテントのように手軽に設置できるものではなく、実際には建築基準法などの法律に基づく申請や検査が必要です。今回は、テント倉庫に適用される法律や必要な申請・検査についてわかりやすく解説します。スムーズな運用を始めるために、ぜひポイントを押さえておきましょう。

テント倉庫は工作物?

テント倉庫は、「テント」という手軽なイメージから、「建築物ではない」「工作物だ」という認識を持っている方が多いようです。しかし、一般的にテント倉庫は「建築物」として扱われます。建築基準法において、建築物は、以下のように定義されています。

建築物

土地に定着する工作物のうち、屋根及び柱若しくは壁を有するもの(これに類する構造のものを含む。)、これに 附属する門若しくは塀、観覧のための工作物(中略)をいい、建築設備を含むものとする。
[引用:建築基準法第2条]


テント倉庫は、基礎を構築する土地に定着した建物であり、屋根および柱もしくは壁を有しているため、建築物の定義に当てはまります。そのため、建築基準法その他関係法令が適用され、発注者には建築確認申請を行うことが義務付けられています。

ただし、以下のような特徴を持つテントは、「軽微なテント工作物」として扱われ、建築基準法は適用されません。
・テント製の簡易な巻き上げ、軒出し
・キャンプ用テント、運動会用テント等の一時的な使用を目的としたもの
・移動可能な温室、キャスター付きテント
・移動可能で、開放性が高く、居住、執務、作業、集会、娯楽、物品の陳列・保管、その他の屋内的用途に使用することを目的としないもの

使用目的に合わせて、「建築物」と「軽微なテント工作物」を使い分けられるとよいでしょう。

テント倉庫に適用される法律

ここでは、建築物であるテント倉庫に適用される法律を紹介します。以下の4つが、代表的な法律です。
・建築基準法・同施工令
・国土交通省告示第666/667号
・都市計画法
・消防法

なお、建築基準法で求められる「確認申請」といった申請行為は、設計者や施工者ではなく、「発注者」の役割です。設計者や施工者が専門知識を持っていない発注者をサポートするケースもありますが、基本的には発注者が、設計図書の審査や竣工検査を受ける必要があります。スムーズにテント倉庫の運用を始めるためにも、法律に関する基礎知識を身に付けておくことをおすすめします。

建築基準法・同施工令

「建築基準法」とは、建築物が満たすべき最低基準を定めた法律であり、「建築基準法施工令」とは、建築基準法の細則などを定めたものです。国民の生命・健康・財産の保護、さらには公共の福祉の増進を目的に、建築物の敷地・構造・設備・用途に関する基準が定められています。

テント倉庫に関連する確認事項としては、以下のようなものがあります。
・建物の規模
・建蔽率および容積率
・延床面積
・構造、耐久性
・用途地域:地域によって建築できる建物用途が定められている
・接道義務:敷地が道路に接すべき長さが定められている
・採光率:自然光を採り込む開口部の面積が定められている
・避難:災害時などの避難に関する事項が定められている

国土交通省告示第666/667号

建築基準法・同施工令とあわせて押さえておきたいのが、「国土交通省(以下、国交省)告示第666/667号」です。建築物に関しては、建築基準法で細則が定められていない特殊な構造について、国交省告示が定められているケースがあります。ここで紹介する第666/667号のほか、アルミ建築構造について定められている第750号などが挙げられます。

テント倉庫に関する告示としては、以下の2つが代表的です。

国交省告示第666号

膜構造の建築物又は建築物の構造部分の構造方法に関する安全上必要な技術的基準を定める等の件

国交省告示第667号

テント倉庫建築物の構造方法に関する安全上必要な技術的基準を定める等の件


第666号は「膜構造の建築物」、第667号は「テント倉庫建築物」という言葉が使われています。わかりやすく表現すると、第666号は膜構造建築物全般に関する告示であり、第667号は一定規模以下のテント倉庫に関する緩和措置といった内容です。

第667号を受けられる可能性があるのは、以下のような条件に当てはまる場合です。
・階数が1であること
・延べ面積が1,000㎡以下であること
・軒の高さが5m以下であること
(詳細はこちら)

緩和措置を適用できると、検討に用いる風荷重を小さくすることができます。それにより、基礎・鉄骨が小さくなり、イニシャルコストの削減に繋がることがあります。その他にも構造的な条件が定められているので、テント業者などに相談してみましょう。

都市計画法

「都市計画法」は、都市の健全な発展と秩序ある整備により、国土の均衡ある発展と公共の福祉の増進に寄与するため、都市計画の内容、制限、事業等に関する必要事項を定めている法律です。

都市計画法のなかで、特に発注者が理解しておくべきなのが、「都市計画区域など」「用途地域」「防火・準防火地域」です。

都市計画区域など

日本の土地は、「都市計画区域(市街化・市街化調整・非線引き区域)」「準都市計画区域」「都市計画区域外」の3つに分類されます。どのエリアに属するかによって、開発許可が必要な規模が異なります。

用途地域

用途地域とは、特定の用途(目的)のための地域にすることを定めた都市計画です。第一種低層住居専用・商業・工業地域といった13種類の用途地域があり、地域によって建物用途、建蔽率・容積率・高さの制限などが定められています。例えば、準住居地域を除く住居関連の用途地域には、営業用倉庫を建てることはできないので、留意しておきましょう。

防火地域、準防火地域

防火・準防火地域とは、防火対策を定めることで火災による被害を抑えるために指定された地域です。駅周辺などは「防火地域」、それより少し離れたエリアは「準防火地域」に指定されるのが一般的です。

防火・準防火地域にテント倉庫を建設する場合、「不燃材料としての膜材料」などが求められ、イニシャルコストが高くなる傾向があります。自治体のホームページに掲載されている都市計画図などで確認できるので、駅周辺や幹線道路の近くでテント倉庫の建設を検討している場合は、チェックしておきましょう。

参考:「5分でわかる!簡単ガイド 膜材料の選び方」

消防法

消防法とは、火災の予防・警戒・鎮圧、火災・地震などの災害による被害の軽減などにより、国民の生命・身体・財産を保護および社会公共の福祉の増進を図ることを目的としている法律です。防火管理者の設置、危険物の貯蔵・取り扱い、消防用設備の設置・定期点検・報告などが定められています

テント倉庫に関しては、延床面積に応じて以下の消防用設備の設置が求められています。
・500㎡未満=消火器
・500㎡以上=消火器、火災報知器
・700㎡以上=消火器、火災報知器、屋内消火栓

消防法では、消火器の設置位置や数などが細かく定められています。倉庫の運用開始後に消火器を移動することがあるかもしれません。従業員の安全を守るため、検査で指導を受けないためにも、消防用設備に関する正しい知識を身に付け、適切な運用を心掛けましょう。

テント倉庫で必要な申請・検査

テント倉庫に関する代表的な申請・検査には、「建築確認申請および中間・竣工検査)」と「消防検査」があります。

建築確認申請および中間・竣工検査

建築確認申請とは、建築物が建築基準法や条例に適合していることを確認する建築基準法上の手続きです。建築確認申請では、申請書・届出のほか、設計図書(意匠・構造・設備図)、構造計算書などを提出します。これらの書類を発注者が準備するのは難しいため、設計者が書類を用意し、発注者が提出する、というのが一般的な流れです。

また、施工の進行に伴い建築主事が実施する中間・竣工検査も、発注者が主体となって受ける検査です。これらは、施工された建物に不具合がないかを確認する検査であり、書類検査と現物検査を行います。首尾よく進められるように設計・施工者と調整を行っておくとよいでしょう。

消防検査

消防検査は、消防用設備などの設置状況が適切であることを確認する検査であり、消防署の職員が現地を確認します。基本的に、倉庫は消防検査を求められません。しかし、「延床面積が300㎡以上で、なおかつ消防長または消防署長が指定したもの」に当てはまる場合は、消防検査が必要です。

事前に消防署と協議を行い、消防検査の要否を確認するようにしましょう。

ストラクトなら法適合や申請のサポートもおまかせ

基本的にはテント倉庫は「建築物」であり、建築基準法や都市計画法、消防法といった法律が適用されます。
ストラクトでは設計・施工者が責任を持って法令を遵守した建設を行います。また確認申請や検査といった手続きは発注者の役割ですが、内容や進め方につきましては全力でサポート致します。建築に関する専門的な知識に不安がある方も、ぜひご検討ください。